若き日の小松崎茂、戦時下の作品復刻誌「機械化」 レビュー

故小松崎茂氏の戦時下の作品を掲載したムック本「機械化」が先日発売されたので買いました。

幻の国防科学雑誌 機械化 01

小松崎茂というと、戦後の少年雑誌のSFグラビアや戦記物、プラモのパッケージアートで有名ですが、この本はそれ以前の戦時下に「国防雑誌・機械化」という子供向け国策雑誌に掲載されていた、氏のデビュー時の作品をまとめたものです。

幻の国防科学雑誌 機械化 11

この巻頭の序文を読むと、この本に載せられている画稿がどれほど希少性の高い物かよくわかります。戦災の焼失と戦後の廃棄処分で原稿と既刊在庫が全く現存しないため、個人の蔵書を十数年かけて探し回り取材とはなんと気の遠い作業・・・

復員者が戦後に戦地での体験をあまり語りたがらなかったように、小松崎氏もまたこの本の事を語らなかったという事は、氏にとっては子供達に戦争を焚き付けた黒歴史として闇に葬り去りたい仕事だったのかもしれません。


もくじです。

幻の国防科学雑誌 機械化 02

陸海空ごとに分けた超兵器の図解、雑誌各号の目次クリップ、門下生の寄稿、機械化表紙と内容ダイジェストによる年表と、小松崎氏の生涯の年表などで構成されています。



「第1章 空の超兵器」より「未来兵器 爆撃ロケット」。昭和17年7月号掲載。

幻の国防科学雑誌 機械化 03

昭和17年にはドイツ空軍がロケット戦闘機メッサーシュミット Me163を実戦配備していましたので、この爆撃機はそれがアイデアの元になったのではと思われます。小松崎氏はプロペラの次世代エンジンの有力候補はロケット推進と捉えられていたのか、この本に載っている他の未来兵器にもロケットを使ったものが多く、ジェットエンジンはほとんど見ませんでした。


爆撃ロケットの解説。

幻の国防科学雑誌 機械化 04

これ以外の解説にも、ロケット砲が将来艦載砲や野戦砲の砲弾に取って変わる兵器だとして、来るべきミサイルの時代を見事予言してました。



「第3章 陸の超兵器 戦車編」より「新案兵器 潜水戦車」。昭和16年12月号掲載。

幻の国防科学雑誌 機械化 05


潜水戦車の解説。

幻の国防科学雑誌 機械化 06

これみたいに違う用途の兵器を合体させて万能兵器とするネタは他にも多く載っています。こういうのは実際には運用に大きなムダが発生するので、一部例外を除いてまずあり得ないんですが、子供にとっては理屈抜きでカッコ良いので、当時心を鷲掴みにされた事でしょうね。


「第4章 海の超兵器」より「新案兵器 対空戦闘艦」。昭和16年5月号掲載。

幻の国防科学雑誌 機械化 07

伊勢、日向が改装される前からすでに航空戦艦を考案済みとは!敵からの攻撃目標になりくい引込収納式司令塔を持ち、その比較対象として、「英國戰艦キングジョーヂ五世: 出來たばかりの戰艦であるが上位に之だけ大掛かりな命令機關を持つ」、「米、最新のカロライナ號でさへこのように大なる目標を敵に與へる」と書かれており、当時両艦は英米の新鋭戦艦だったのがわかります。


対空戦闘艦の解説。

幻の国防科学雑誌 機械化 08

昭和16年5月号ですからまだ真珠湾攻撃もマレー沖海戦も発生しておらず、この頃から小松崎氏は飛行機は戦艦の脅威になる事を予言していたようです。航空戦艦自体は実際には使い物になりませんでしたが・・・。



「第5章 目次クリップ」より、昭和16年7月号の目次。

幻の国防科学雑誌 機械化 09

目次カットには「米國航空母艦解剖圖」と銘打った挿絵があり、「米國 最新式航空母艦ヨークタアウン號、排水量 一九九〇〇噸(以下略)」、「新鋭グラマンF四F三 單座戦闘機 時速(最大)五三〇粁」とキャプションが付いていて、ここでも空母ヨークタウンとF4F-3が当時の最新兵器であった事が伺えます。

「各國機關車の威容」「飛行彈丸の撮影法」、「魚型水雷の作り方」など一体どんな事が書かれているのか興味津々なコラムが載っており、さらには「一億の總進軍 支那事變四周年に際して・・・・陸軍大臣陸軍中將 東條英機」と、内閣総理大臣になる直前の東条英機が寄稿しているのにちょっと驚いたりします。

正直、小松崎氏の絵だけでなく、この機械化という本一冊まるまる読んでみたいところ。


その他の内容。

幻の国防科学雑誌 機械化 10

  1. 第6章 門下生からのメッセージ・トリービュートイラストの上田信氏のページ。
  2. 第7章 機械化年表。創刊から休刊までの表紙と内容の縮小画像と、当時日本で起こった出来事が並行記載されています。
  3. 同じく第7章 小松崎茂年表。生誕から死去まで、氏の仕事と作品が紹介されています。
  4. 各章の合間など所々に挿入されている表紙ギャラリー。



一通り読んだ感想としては、そこに載っている戦前の歴史的仮名遣い、当時最先端の科学技術の数々と未来予想図、国威発揚を狙った見出しなどに、少年少女期の両親や若かりし頃の祖父母の生きた時代の社会情勢、風俗、習慣の空気を生々しく感じ、70数年前にタイプスリップしたような不思議な気分になりました。

戦前と戦後の日本の有り様があまりに違うため、自分には両時代が点と点としてしか認識できない感じがあるのですが、この本を読んでいると当時の普通の子供の等身大の感覚に触れられるのでそれらが線で結ばれ、今の日本はあの時代の延長上に存在している事を、理屈でなく実感として感じ取れたような気になる、そんな本でした。

価格は3200円(税別)とムック本としては高い部類です。
しかしA4オールカラー(モノクロ画もカラースキャニングしているため)240ページでボリュームがあり、元々B5版寸だった雑誌をA4に引き伸ばしてるため文字も大きくて老眼の目にも読みやすく、希少な雑誌を幾年月も取材してまとめあげ、刊行にまで漕ぎ付けたスタッフの労力を考えると安く感じます。

直接模型とは結びつかない本なのでこのブログに書くするつもりはなかったんですが、個人的にあまりに面白かったためレビューしてみました。




ぐぐったらなんとYouTubeにプロモムービーまでありました。


《外部リンク》




機械化 小松崎茂の超兵器図解 (アーキテクト刊 モダンメカニクス・シリーズ) 【Amazon】
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