1月26日発売予定の世界の軍艦コレクション2016年2/16 号(第80号)空母祥鳳のレビューです。

3年に渡って長らく続いたこのシリーズもついに最終号となりました。
トリを飾る艦としては、戦争序盤で真っ先に沈んだ空母というのはどうなん?と思ったりもするのですが、まあそれは置いといて製品の出来栄えを見ていきたいと思います。
《冊子》 祥鳳は、軍縮条約により空母の保有枠を使い切った日本海軍が、いつでも空母に改造できるようにと潜水母艦として誕生、竣工から2年も経たずに空母に生まれ変わり、初陣で撃沈された「空母戦で沈められた最初の空母」となった艦歴が解説されています。
《全号通しての冊子の総評》 最後なのでシリーズ全体を通して冊子の評価をすると、誌面で使われている写真のキャプションに時々間違いが見受けられたり、描き起こしの平面図やCGイラストの信憑性が低いので、モデラー目線としての資料的価値は残念ながらほとんどなかったです。
ただし解説文に関しては日米の軍事専門家が監修しているだけあってしっかりしており、濃いマニア向けの検証や新説のような目新しい記述はないものの、この製品のターゲットであるライトユーザー層に対しては申し分のない内容でした。
《1/1100ダイキャストモデル》 1942年仕様なので、四航戦として活躍した戦時下の姿です。





製品の感想 - このシリーズの空母の恒例チェックポイントである湾曲煙突の後ろの高角砲と機銃には、正しく防煙シールドが付いている。ここをちゃんと出来ていたのは記憶する限りシリーズ初期の赤城と翔鶴のみで、他の湾曲煙突搭載空母はすべて間違っていた。
- ただしシールド付銃器の造形は、高角砲も機銃もまったく似ていない。シールド無しのほうは良く出来ている。
- もうひとつのチェックポイントである艦載機の並びは、艦戦、艦爆、艦攻の順になっており正しい。こちらもほとんどの空母が間違っていた。
- ただし祥鳳には艦爆は最期まで搭載されなかったし、艦戦も零戦の配備遅れから九六式艦戦との混成だったのに、模型では零戦のみになっている。
- 零戦のカラーリングが銀になっているが、それは対米戦前の話でこの時期は灰緑色だった。
- 艦載機が主脚表現のない胴体着陸状態。シリーズ後半の空母ではほぼ改善されていた点だったのに元に戻ってしまった。
- 舷側のスポンソン支柱の造形に奥行きがなく、そのため各スポンソン底とに大きなズレが出来る。これは遂に最後まで直らなかった。
- 飛行甲板右舷後部にある収納式ジブクレーンとその周辺が、色指定ミスでデッキ色に塗られている。
- スタイリングは上面、側面ともWikipediaの祥鳳の図面と重ね合わせてほぼ一致するほどの正確さ。
- 組み立ては、毎回あるマストのゆがみ、傾きはほとんどななくキレイに組まれている。
- 塗装は目立つはみ出しやマスクもれもなく良好。艦尾甲板上のボートの上構物がデッキタン一色なのが残念。
空母独自のゴチャゴチャ感の大元である舷側のディテールがダイキャスト成型のため、全体的にあっさり&ダルめに見えますが、代わりに大きな考証ミスがなく、そこのマイナスポイントが低いので総合的に良作という判断です。ただ空母が今まで毎回あまりにも地雷だったので、その分バイアスがかかって採点が甘くなっているのではと言われればそうかもしれません(苦笑)。
中でも機銃・高角砲の防煙シールドの件と艦載機の並び順については、図面と見比べれば素人でも気付くところをなんで毎回間違えるのかと口が酸っぱくなるほど苦言を呈し続けてきただけに、この祥鳳で初めてその両方が正しく出来ているのを見て、最後の最後にストレスを感じさせないマトモな姿になった!遂にやってくれた!と感動しました。
でもよく考えたらこんなので出来ていて当たり前の事なんですけどね。代わりに今度は艦載機の色間違えてるし・・・
《簡易ディテールアップ》 空母の構造上、飛行甲板の裏や下の部分に手を入れにくいので、一度分解して作業を行いました。
最も手を入れたのは艦載機。搭載されてないはずの九九式艦爆を九七式艦攻に改造して艦攻2機→4機に増数。


手を入れた個所 - 九九式艦爆の主翼を整形して九七式艦攻に改造。
- 脚部をしりもち状態の三点着地に改造。
- 各機の色を正しくリペイント、自作日の丸デカール貼り付け。
- デッキ色に塗られていた飛行甲板上クレーンとその周辺を船体色に塗装。
- 甲板標識リペイント。
- タミヤウェザリングマスターで木甲板部分をグラデーション処理。
- ねむいモールドの艦橋窓を自作デカール表現に変更。
- 各装載艇リペイント、色数追加。
- スミ入れ塗料と0.2mmシャーペンで各部スミ入れの後、つや消しコート。
- 艦首菊花紋章作り直し。
- 機銃、スクリューといったメタリック塗装部をリペイント。
- 自作艦これステッカーをディスプレイベースに貼る。(作り方はこちら)
《全号通しての模型の総評》 模型についても総評すると、手放しでオススメできる代物とはお世辞にも言えない品質でした。しかし十分でなかったにせよ回を重ねる毎に品質が改善されており、そこは素直に評価したいです。
具体的には、
- 船体色とデッキ色が毎回濃かったり薄かったりでバラバラ → 船体色は中期以降ほぼ統一、デッキ色も後期ほぼ統一
- 組み立てのゆがみ、ずれ、接着剤のはみ出しが酷い → 後期から許容レベルになる(一部除く)
- 塗装はみ出し、指紋跡、謎の油が付いている → 中期から許容レベルになる(一部除く)
- 艦橋窓がない → 中期から凹モールド処理されるようになった
- 飛行機の主翼が厚い、着陸脚がなく胴体着陸状態 → 中期から許容レベルになる(一部除く)
造形や組み立て塗装に関しては、後期はほぼ毎回価格に見合った及第点レベルに達していたと思います。ただもうひとつの大きな問題点である考証ミスが全く改善されず、これが最後まで足を引っ張って製品の総合評価を下げていたのが残念でした。
とはいえ2000円ちょいの低価格で艦船の塗装済み完成品をたった3年間でこれだけたくさん揃えた製品は過去に例がなく、品質が伴なえば大化けしたかもしれず着眼点は良かったと思います。
《おわりに》2012年の12月に、出版元の英イーグルモス社の国内代理店であるハーパーコリンズ社(当時は旧社名のハーレクイン社)からオファーを受けレビュワーを始めて早3年、良い事より悪い事を書いてる方が多く、これ本当に販促になってるのだろうか?どう評価したら良いのかと頭を抱えたくなる回もありましたが、担当さんからはステマ的な情報拡散は意図してないので辛辣な意見も遠慮なく書いてもらって構わないとのお墨付きをいただいてたので、そこは言い回しに気を付けつつも話を盛る事なく、率直な感想を述べてきたつもりです。
石の上にも三年とは言いますが、いつ辞めても良いという約束で始めまして、時には酷い罵声を浴びせられた事もあったのによく最後まで続いたなあと我ながら思います。その原動力となったのは、関わった以上途中で放り投げたくないという意地みたいなものもありましたが、幸運にも艦これブームによる予想外の追い風があった事、そして何よりも毎回見に来てくれる人達がいたからというのがものすごく大きいです。人を突き動かすのはやはり人なんですね。
最後まで拙レビューをご覧いただいた皆様、私をレビュワーに抜擢していただいたハーパーコリンズ社とその続投を承認された(当初は5号までの契約でした)イーグルモス社の中の方々、そしてシリーズ前半の監修担当で共に製品レビューを公開し、支えになっていただいた元防大教授・海将補の堤明夫様には、この場を借りて心からお礼を申し上げます

表紙見開きの次回予告のスペースは、シリーズ完結にあたって読者へのお礼文と、バックナンバーのリストになっていました。
これにてこのコンテンツを締め括り、長らく休止していたプラモデルの世界に戻ろうと思いましたが、時間切れでディテールアップやりっぱになっている艦船がまだいくつか残ってますので、戻るのはまずそれらを片づけてからと考えています。
特に結構手を入れたまま長らく転がってる隼鷹だけでも形にしなければ!

もうちっとだけ続くんじゃ。
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に続いて
セブンネットショッピングも売り切れ。(1/26現在)
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- 2016/01/25(月) 18:51:17|
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前回の伊400とUボートVIIC型に引き続き、同時にシリーズ完結セール価格になっている特製バインダーもレビューします。これも当時ハーパーコリンズ社から一緒に見本いただいてました。

これはバインダー本体でなく、それを入れている輸送用ケースです。書店での陳列を考慮したのかえらくキレイな装丁で、コストかかっていますねえ。

開くとこんな風に入っています。

これがバインダー本体。各艦のシルエットが並んでいるシンプルでなかなか良いデザインです。背表紙に貼るナンバーシール付き。

バインダーを開けたところ。

留め具はこんな風になっています。これで一体どうやって閉じるんだろ?

背の部分にマガジンの綴じ方が書いてありました。
しかしこれ読んだだけではさっぱりわかりません。公式サイトも確認しましたが、バインダーの使用法に関する記述は一切なし。
まあこんな物は他社の分冊百科用でも似たような代物だろ思って調べてみたら、ディ○ゴ製バインダーで写真付きのわかりやすい図説が見つかりました。イーグルモスはこのシリーズ以外にも日本で商売してるんだから、そういうのはサイトにちゃんと載せたほうが良いと思います。
で、その綴じ方は以下の通り。

ピンが付いてる枠組みを留め具から切り離し、次に枠からピンを切り離します。
つまりこのバインダーは買って来てすぐに使える仕様ではなく、留め具の組立が要るのです。ならやっぱり図入りの説明書用意しないと、文字だけではわかりにくいだろー。

留め具の穴に左からピンを差し込みます。なぜ左からかというと、このバインダーは左綴じなので、表紙を開けた時に若い号数の冊子ほど上に来る綴じ方にするためです。
説明にはピンを差すのは下部留め具とありますが、実際は上下どちらでも構いません。

冊子が綴じられている真ん中のページを開いて、そこにピンをひっかけます。
写真では行きがかり上ピンをまとめて留め具に刺していますがこれは失敗の巻で、こんな風にすると2冊目以降の冊子が入れにくくなり紙を痛める原因になるので、面倒でもピンは一冊綴じるごとに刺すようにした方が絶対良いです。

片側(この場合上)を綴じたらもう片側(この場合下)の留め具にもピンを入れて綴じます。

これで一冊綴じるの完了。
ピンは縦に薄く横に厚くなっているので、冊子を自然に閉じられる上に引っ張り強度も問題ありません。

同じようにして隣の穴にピンを差して順番に冊子を綴じていきます。

バインダー1冊に冊子を20冊綴じる事が出来るので、全巻揃えてる場合は4冊あればOKです。
ピンは予備が2本付いていると書かれていますが、これは片方の留め具につき2本という意味で、正しくは上下で合計4本予備として余ります。

背表紙の四角の枠は付属のナンバーシールを貼る枠です。集めた数によって必要なバインダーの巻数が変わりますから、数字は任意で選べるようになっています。

綴じ具は樹脂製ですが上記通りしっかりした作りで、すべて綴じた状態で立てても冊子の重みで留め具やピンがたわんだりずれたりする事はなかったです。

ご覧のとおり、あんなペラペラで貧相な感じだった冊子が見違えるほど立派に見えまして、通常価格の1290円分の価値は十分に感じました。なので今回のセール特価の1冊710円は大体45%引きという事でかなりお買い得と思います(ただし注文は2冊から受付)。これは文句なくお勧め。
なおセール価格は公式サイトの直販のみです。
いつまでこの価格なのかは聞いてないのでわかりません。
世界の軍艦コレクション 公式サイト トップページ
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- 2016/01/21(木) 00:23:39|
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世界の軍艦コレクション完結記念に、定期購読の特典だった伊400潜水艦とUボートVIIC型をセット販売するとの旨が、公式サイトのトップページにてアナウンスされました。
世界の軍艦コレクション 公式サイト トップページ同時に冊子を閉じる特製バインダーも格安販売するようで(通常価格は1290円)、シリーズもあとは最終号を残すのみとなり、いよいよ店じまいセール始めたんだなあと感じました。
この2隻の潜水艦のサンプル、1年ちょい前くらいにハーパーコリンズ社からいただいてたんですが、当時でも読者プレゼントの時期をとうに過ぎていた事あってずるずる引っ張ってしまい、レビューする機会を逸していました。しかし今回良い機会なので改めて行いたいと思います。
《伊400》
水上攻撃機晴嵐を3機艦内格納可能で、地球1周半の長大な航続距離により世界中どこでも爆撃可能な空前絶後の超巨大潜水艦。潜水空母と呼ばれたりします。
といってもあくまで潜水艦としては大きいのであって、水上艦と比べると夕張といった小型の軽巡か秋月型駆逐艦くらいの大きさです。模型の全長は約11cmほど。



製品の感想 - 船体はダイキャストでなくPVCぽい。なのでプラモデル並みに精密でシャープな継ぎ目モールドがある。
- にもかかわらず重さはいつもの通りずっしり重たい。中にバラストが仕込んであるのかもしれない。
- 艦橋頭頂部に林立しているシュノーケルやアンテナ等儀装のディテールも相当細かい。
- ただし独自の耐久性基準のためか、部品の細さや薄さに関しては普通のシリーズと同様にごつい。
- 初期の製品なので、塗膜にホコリを咬んでたり角が出てたりと仕上がりの粗さを感じる。
- カタパルトは幅がややオーバースケールなせいか、艦首寄りの部分が艦幅の中心に設置されており、右舷にオフセットされているように見えない。
- 晴嵐は水上機なのに、車輪式の空母艦載機のようにしりもちを付いている。
- ディスプレイベースの支柱は真鍮パイプになっていて、前後の間隔も通常シリーズと比べて狭くなっている。
《UボートVIIC型》 Uボートはドイツ潜水艦の総称ですが、一般的に第二次大戦で活躍したUボートと言えば大抵このVIIC型を指します。
通商破壊活動用に作られているので、艦隊決戦前の漸減作戦兵器として設計された日本の潜水艦と比べると小さく、実際この模型は全長わずか6.5cmほどしかありません。シリーズ中ぶっちぎりで小さいです。



製品の感想 - 伊400と同じく船体はPVCぽく、見た目以上に重いので、やはり中にバラストが仕込んであるのではと思う。
- 超小さいがそれに合わせてディテールも超細かい!特に甲板のモールドはもはやこのシリーズとは別次元の代物。
- ループアンテナが実際に環状に成形されてるのは多分このU-VIICが最初で最後。
- 艦橋上部後端の膨らんだブルワークは、実物ではテーパーのかかった手すりである。大きさを考えるとやむを得ない表現だが賛否分かれると思う。
- 考証ミスは特に見当たらない。
- 伊400と同じくディスプレイベースの支柱は真鍮パイプで、間隔が短い。

せっかくなのでいつもの艦これ仕様に。伊号潜水艦は模型の400も艦娘の401も同型なのでまだ言い訳立ちますが、 UボートはVIIC型とIXC型では別物なので無理矢理です(苦笑)。
伊400にしてもU-VIICにしても、船体ディテールが今までと全然違うので「こんな細かいのダイキャストで可能なの?!」と驚きまして、試しに船底にあるネジ穴の角をアートナイフで少し削り取って切り口を見たところ、どうやらプラ製のようで合点がいきました。重巡以上の大きさでないとダイキャストの金属感と重量感は見た目ほとんどわかりませんので、軽巡と駆逐艦もこの方法でやればよかったのにと今さらながら思います。
そして細かいのは船体だけでなく甲板や上部構造物もでして、ディテールの細かさで頭一つとび出しておりプラモデルと比べても遜色ない品質です。またディスプレイベースの支柱は当方に送られて来たものは真鍮パイプですが、公式サイトの見本はいつもの黒い三角錐のプラ製になっているので、もしかしたらロットによって違いがあるのかもしれません。
そんな風に色々と通常シリーズと異なる部分を持つ模型なので、この2点だけ設計と製造の外注先が違うんじゃないの?と勘繰ってます。
価格は送料込み2つセットで5000円という事で通常のシリーズ2つ買うのと大体同じなんですが、模型の大きさを考えると結構なお値段だなあと正直思います。前にも書きましたが分冊百科のコレクションシリーズというのは、その代わりに凝った迷彩塗装の大型艦でもその値段で買えるので、割高感あるのも割安感あるのも含めてグロスで見るという割り切りが出来るかどうかですね。出来るのなら是非ともコレクションに加えたい秀作ではないかと。
ただ初期の製品なので組立塗装の個体差は最近のより大きいかしれませんね。^ ^;
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- 2016/01/14(木) 21:41:43|
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松の内も過ぎてしまいましたが新年おめでとうございます。
今年最初のブログ更新も世界の軍艦コレクションのレビューでして、来週1月12日発売予定の2016年2/2号(第79号)戦艦ガングートです。

ロシア艦は61号のボロジノに続いて2隻目。そしてシリーズ最後の外国艦となります。
《冊子》 日露戦争後のロシア海軍立て直し期に出来た戦艦ながら大々的な近代化改修を受け、革命による内戦と二度の世界大戦を戦い抜いたレニングラードの英雄と解説されています。とはいってもソ連海軍は日米海軍のような大海戦を繰り広げたわけではないので、その感覚で読むといささか拍子抜けの戦歴です。
《1/1100ダイキャストモデル》 ガングートは近代化改修前と後とでは全く別物と言って良いほど姿が変わっており、この模型は1914年の就役当時の改修前の姿。パッと見超デカイ球磨型軽巡です(笑)。個人的には改修後の個性的な艦形のほが好みだったり。





製品の感想 - 形状的に大きな考証ミスは見当たらず、シルエットはなかなかガングートしていると思う。
- けど砕氷艦首は折れ角がなくストレートなアウトラインで正直似ていない。
- シンプルな上部構造物形状が幸いしてかデッキ色との塗り分け品質はかなり良く、組み立て精度も高い。
- しかし甲板上にある通気口やハッチなどの塗装が薄く、下地のデッキ色が微妙に透けている(個体差の可能性あり)。
- 艦尾の第二甲板がデッキ色でなく船体色で塗りつぶされている。
- 公式サイトの見本品のように、主砲と艦橋に張られた防水キャンバスは塗装されていない。
- 木甲板は継ぎ目モールドが省略されている。
- ケースメイトの120mm副砲はダイキャスト船体と一体成型なので、立体感に欠けモールドもダルい。
考証的には問題なさそうですが、造形的にはのっぺらぼうの木甲板、船体一体成形の副砲といったようにディテール不足で手抜き感が目立ちました。特に木甲板に関しては、
桜と錨様のブログ解説で後日知りましたが、ロシア艦には他国と違った独自の木板の張り方があり、以前のボロジノでの考証ミスのひとつだったので、今回は挽回のチャンスとして再現して欲しかったですね。

冊子に使われてる写真を見るとわかりますが、こんな風に横方向にリノリウム押さえのようなパターンが等間隔にあり、その間に短い木板を縦方向に並べて敷き詰めるという工法で施工されています。主観ですが、今回のガングートは出来の良いのが多い外国艦枠の一端としてはやや物足りなさを感じました。
あと毎度行っている簡易ディテールアップは、今回は時間との兼ね合いでお休みいたします。期待されていた方はどうも申し訳ありません。
そして次回80号はついに最終号で空母祥鳳です。

祥鳳も無論良いフネなんですが対米戦序盤に沈んだ空母という印象が強いので、シリーズのトリということなら創刊号の大和と対となる戦争後期の大物信濃、もしくは日本海軍最後の竣工艦初梅、戦後復員船として活躍した葛城あたりで締めるといった粋な計らいが欲しかったかなあ。
さてその出来は如何に?
世界の軍艦コレクション(79) 2016年 2/2 号 [雑誌] 【Amazon】
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- 2016/01/09(土) 21:09:59|
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12月28日発売予定の世界の軍艦コレクション2016年1/19号(第78号)軽巡大淀のレビューです。

日本海軍最後の軽巡であり、同時にシリーズ最後の軽巡となりました。
《冊子》 軽巡としては群を抜いて大型ながら、最新鋭の阿賀野を超える性能を有していた事、潜水部隊の旗艦として生まれながらもその通信設備の良さから途中艦隊旗艦に改装されて、レイテ海戦では小沢艦隊の空母護衛で活躍した事などが解説されています。
また大淀以外にも、終戦により建造されないまま終わったミニ大和と言えるB65型超甲型巡洋艦や、シリーズに潜水艦がラインナップされていないため今まで解説のなかった潜水戦隊のコラムが載っています。
《1/1100ダイキャストモデル》 1944年仕様で連合艦隊旗艦時代の姿です。





製品の感想 - 造形は、上部構造物は艦橋と煙突がカッチリモールド、マストと高角砲はダルめモールド。
- 艦橋の造形は、羅針艦橋窓の上の遮風装置の大淀独特の段付き側面部が再現されていたりと細かい起伏をなかなか良く作ってある。
- 15.5cm三連装砲は、砲身が前回の熊野よりひとまわり細くなりスケール相応に近くなった。
- 前部マストが熊野同様前のめり気味で、横から見て直角三角形のシルエットになっている。公式見本や部品設計から見て、今回のは個体差でなく仕様ぽい。
- 単装機銃は省略されている。ただし改装工事終了直後には付いてなかったらしいので、その時期の再現とするなら正しい。
- 格納庫天面は鉄張りの滑り止め表現になっているが、今はリノリウム張り説が主流。
- 飛行作業甲板前にある三連装機銃の銃座が丸型になってるが、ここは八角形を半分に切った角型。
- 塗装は、上部構造物基部にリノリウム色がかかっているところが少しあるものの、トータル的には良い部類。
前部マストの前のめり以外は並もしくはそれ以上のレベルにあると思います。
このシリーズ、全体の2/3を消化した頃から号数で言うと60番台までは品質的に下り傾向にあり、中には閉口してしまう物もありましたが、70番台からはまた持ち直し始めてここのところ酷いのは少なくなってますね。良い流れなのでこのまま最後まで持ちこたえて欲しいです。
《簡易ディテールアップ》元が悪くないので修正らしい修正は、前部マストの前のめりを修正したくらいでしょうか。


手を入れた個所- 目立つゲート痕とバリを処理。
- 前部マストの前のめり修正(横から見て直角三角形を二等辺三角形に修正)。
- 艦橋もよく見ると微妙に傾いてたので修正。
- 艦橋頭頂部の21号電探に網目モールドがないので、汎用メッシュエッチングを貼って再現。
- 前部・後部マスト、カタパルトのトラス構造部の吹き抜け部をベタ塗り。
- 羅針艦橋正面の遮風板にスリット書き込み。
- 甲板と上部構造物の境目の塗装ズレを修正塗装。
- 水上機、ボート、主砲防水キャンバス、錨鎖等をリペイント。
- 水上機の識別帯、日の丸は自作デカールで再現。
- 各部スミ入れ、ハイライト入れ、つや消しクリアーコート。
- 艦首菊花紋章作り直し。
- 機銃、スクリューといったメタリック塗装部をリペイント。
- 探照灯にミラーフィニッシュ貼り付け。
- 自作艦これステッカーをディスプレイベースに貼る。(作り方はこちら)

時期的にタイムリーなので、艦娘大淀のクリスマス版ステッカーも作りました。
にしても大淀はデカイ!他の巡洋艦と比べるとこんな具合。


重巡の船体を持つなんちゃって軽巡の熊野にはさすがに及びませんが、ほぼ同時期の最新鋭艦で大型の軽巡と言われた阿賀野どころか、古参重巡の古鷹より大きくて、見た目的にはこれを軽巡と呼ぶのは結構無理あるような気がします(笑)。
巡洋艦に限らず駆逐艦では秋月、戦艦では大和といった具合に、戦時下に竣工したフネはいずれも一気に大型化しているのに気付きます。
さて、次回79号は戦艦ガングートです。

シリーズ最後の外国艦枠は日露戦争以降のロシア艦…私にとってフランス艦以上に知らない謎のフネです。

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と
楽天ブックスはすでに在庫なし。(12/28現在)
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- 2015/12/27(日) 12:41:39|
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15日火曜発売予定の、世界の軍艦コレクション2016年1/5 号(第77号)重巡熊野のレビューです。

最上型重巡は他の3隻がすでに発売済みなので、今回の熊野でコンプリートとなります。
《参考記事》
《冊子》 熊野は後でいつでも20cm砲に換装して重巡になれるよう用意周到に作られた最上型軽巡の四番艦。
先に作られた最上、三隈、鈴谷が運用結果から大改修を施したのに対し、末っ子の熊野はまだ建造中だったため最初から強化された姿で生まれてきた事、その後他の姉妹艦と同じく戦争準備で重巡化改装した経歴などが解説されています。
《1/1100ダイキャストモデル》 15.5cm三連装砲を搭載した軽巡時代の1938年仕様。熊野は1937年竣工なのでつまりはその時と同じ姿で、他の姉妹艦3艦は重巡もしくは航巡時代の姿だったので、製品としてうまく差別化出来てると思います。





製品の感想 - 軽巡時代の姿なのに、置台に印刷されている「重巡洋艦 熊野」の表記はどうかと思う。
- 考証においては大きなミスはないように思う。
- 造形は平均レベル。可もなく不可もなくという感じ。
- 同型艦でも毎度デザインが違うこのシリーズにおいて、この熊野は珍しく鈴谷に酷似してる。これほど似ているのは初期に発売された大和・武蔵と同等かそれ以上!
- したがってデザインの長所・短所はだいたい鈴谷と同じと思って良い(船体形状など)。
- 鈴谷の欠点のひとつだったジャバラみたいな煙突のジャッキステー表現は改善されている。
- 高角砲も鈴谷のようなヒケまくり成形ではなくマトモになった。
- 15.5cm三連装砲がやや大きい。大和型のと比べて半回りほど大柄で、重巡用20cm連装砲を三連装にしたくらいのサイズ。
- よく見ると水上機はカタパルトに載っていない。となりの運搬軌条上の旋回盤に置いてあり、模型の表現としては珍しい。
- 組み立ては、前部マストが前のめり気味で、横から見て直角三角形みたいになっていた。それ以外は各パーツ水平・垂直が正しく出てる。
- 塗装は、リノリウム色と上部構造物の境界塗り分けに一部甘い部分があるが、これくらいなら上出来の部類。
この熊野、よく目を凝らして見ないと主砲以外は鈴谷と同じ部品を使ってるのじゃないかと思う位に似ており、これだけ似てるなら今までずっと言われてきた部品の共有化がようやく成された例と言っても過言ではないのではと思います。今さら言ってもだけど、最初からできていればどれだけ製品の全体評価が上がってた事か・・・。゚(゚ノД`゚)゚。
《簡易ディテールアップ》そっくりなので鈴谷に準じたディテールアップですが、熊野は羅針艦橋や艦橋窓のモールドがしっかりしてたので、鈴谷のように自作デカールに置き換える必要はなかったです。


手を入れた個所- 羅針艦橋正面など目立つゲート跡とバリを処理。
- 前部マストの前のめり修正(横から見て直角三角形を二等辺三角形に修正)。
- 甲板と上部構造物の境目の塗装ズレを修正塗装。
- 煙突の白帯追加。
- 水上機、ボート、機銃、主砲防水キャンバス、錨鎖等をリペイント。
- 90式水偵を旋回盤からカタパルト上に移設、旋回盤上の担架削除。
- 探照灯台座とカタパルトのトラス構造部をベタ塗り。
- 各部スミ入れ、つや消しクリアーコート。
- 艦首菊花紋章作り直し。
- 機銃、スクリューといったメタリック塗装部をリペイント。
- 探照灯にミラーフィニッシュ貼り付け。
- 自作艦これステッカーをディスプレイベースに貼る。(作り方はこちら)
今回の艦これステッカーは、素材を切らしてしまったのでホログラムタイプではなく、写真光沢用紙に印刷しています。
鈴谷と並べました。



主砲以外で両製品のわかりやすい違いは、航空甲板の運搬軌条の色と、再現されてる甲板上ハッチ類の数くらいでしょうか。姉妹艦で同じであるところは同じ、違うところは違うという当たり前の事がきちんと出来ているので、並べて飾ると楽しいです♪
さて、次回78号は軽巡大淀です。
最上型の15.5cm砲は、大和型以外ではこのフネに載せ替えられたんですねえ。

今回の熊野がシリーズ最後の重巡でしたが、大淀は最後の軽巡となります。
セブンネットショッピングも在庫あり。
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は完売。(2015-12-16)
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- 2015/12/13(日) 23:41:36|
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